津軽風土季 特集記事

十三湖への想いから生まれた光の名作

 

大正浪漫の面影残るステンドグラスの名所を訪ねて

青森県北津軽郡中泊町の尾別(おっぺつ)という地区に所在する、旧家・宮越家。明治18(1885)年に9代目として生まれた宮越正治(まさはる)は漢詩を得意とした人物で、文化人との交流も深く、美術に対する高い審美眼を持っていました。正治が18歳の時に結婚した妻・イハもまた、アララギ派の一流歌人として活躍。そんなイハの33歳の誕生祝いと厄除けを兼ねて、大正9(1920)年に正治が建てた離れ「詩夢庵(しむあん)」が今も尾別地区に残されています。中泊町の文化財に指定されているこの建物最大の見どころは、小川三知(さんち)によって制作されたステンドグラス作品です。「涼み座敷の間」の窓に施された『四季花木障子』に描かれているのは、春のモクレン、夏のアジサイ、秋のハゼ。余白の部分は冬に見立てられており、借景となる庭には落葉樹が植えられるなど、季節の移ろいを感じられる作品に仕上げられています。さらに、「円窓の間」と廊下を飾る『十三潟景観』は、その名の通り十三湖の景観をモチーフにした円構図の作品で、正治が愛して止まなかった十三湖のしじみに対する想いと、白砂青松を得意としていた三知の技が融合して生まれました。針葉樹ならではの幹肌の質感は見事で、外から光が射し込むと湖面が揺らいで見えるという粋な仕掛けも。

もう一つ、宮越家を語る上で欠かせないのが、「詩夢庵」を囲むように配置されている庭園「静川園(せいせんえん)」です。枯山水庭園と池泉庭園、そして津軽地方で多く見られる大石武学流庭園の三種類で構成され、庭園内には戒壇石や石幢(せきどう)、十三重塔、ライオン石といった、通常の庭園ではあまり見られない石造の数々が。これは、正治と親交のあった日本画家・橋本関雪が京都東山に開いた「白沙村荘」に影響を受けたものと考えられています。

日本画らしい色合いのステンドグラス作品と、津軽ならではの名庭園を通して楽しむ四季の彩り。なお、『十三潟景観』をパッケージに採用したお菓子「詩夢庵」(本誌14頁掲載)も人気です。この機会にぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

宮越家 離れ・庭園

住所/青森県北津軽郡中泊町尾別玉の井

住所/青森県北津軽郡中泊町尾別玉の井 問合せ先/中泊町文化観光交流協会(TEL 0173-57-9030)

詳しくは宮越家ホームページをご覧下さい

中泊町ご当地グルメ

旧宮越家がある中泊町は、海・山・湖の幸が揃う食の宝庫。そこで今回は青森県ナンバー1の水揚げ量を誇る高級魚「メバル」を使った、これからの季節にぴったりのご当地グルメを紹介します。

中泊メバルちゃんこ鍋

現役の大相撲力士である宝富士と阿武咲の出身地は、ここ中泊町。そして相撲と言えばちゃんこ鍋ということで誕生した、通称「メバちゃん鍋」。津軽海峡メバルをはじめ、十三湖のしじみや地元の山菜、新鮮な刺身タコなど、中泊町ならではの贅沢具材を、ダシの効いたスープと共に楽しめます。

中泊トマト海鮮ラーメン

漁業だけでなく、農業も盛んなこの町で新たに生まれたご当地グルメ「トマ鮮ラーメン」。地場産トマトで作る濃厚なスープに、もっちりとしたコシのある太ちぢれ麺がよく合う一品。津軽海峡メバルで作った魚肉ソーセージや、津軽地方の名物・イカ天かまぼこなどもトッピングされています。

今回ご協力いただいたお店

くつろぎダイニング哲。

店長兼料理長 中畑 哲也さん(中泊メバル料理推進協議会会長)

住所/青森県北津軽郡中泊町大字中里字紅葉坂48-4

営業時間/11時〜13時L.O、18時〜22時L.O

休み/月曜、第2・4日曜、12月31日〜1月2日

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